航空券
「もう遠い昔のことでよくは記憶していない。
だから旅行記の最終日を参考にしていただきたい。
たしかあの日は、日本に帰れるという想いと20日間の旅の疲れを感じていた。
だからあまり全てに頭が回っていなかった。
荷物をまとめたものの、いろんな物をホテルに忘れていったのも確かである。
そして朝、バスに乗ったものの、全ての疲れを感じて
ボーっと半分眠っていた。
そこにあの航空券がまわってきたのである。
そう、そのことは確実に覚えている。
自分のを手にしたことも。
いったんはカバンにしまおうと思ったが、
券は大きいから、しまうと折れてしまうのではないか、
それに面倒だと思って
横のカバンの上に置いたことも覚えている。
しかし次に記憶があるのは
バスを降りて、運転手さんを見送った場合である。
そして航空内に入った瞬間、航空券のことを思い出した。
自分がバカだとかいろいろ思ったし、
みんなもアホだとか思ったことであろう。
でもそれはもうどうでもいいことである。
それよりもみんなと一緒に日本の土地を踏めたことが何よりも幸運であった。」
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